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2008年3月 4日 (火)

学会取材

品川で開催された日本画像医学会を取材してきた。仕事として聞いたのは消化菅画像診断をテーマとしたワークショップであったが,取材した演題以外では,カプセル内視鏡の現状を紹介した慶応義塾大学内視鏡センターの緒方氏の発表が面白かった。

10年以上前だったか,米国消化器病学会(AGA)の学会主催の記者発表で,まだ米国でも承認されていないカプセル内視鏡の実物を手にとってみたことがある。薬のカプセルなどよりもはるかに大きくこれを飲み込むのはたいへんだろうなと感じた記憶がある。イスラエルの会社が作ったそのカプセル内視鏡はその後米国でFDAの認可を受け,現在,広く臨床応用されている。日本でもそのカプセル内視鏡が昨年ようやく承認された。オリンパスなどの日本の会社も同種のものは当然開発していて,それらもまもなく承認されるらしい。

緒方氏の発表のタイトルは「カプセル内視鏡による全消化菅診断は可能か」というもので,答えは現時点では無理,というものだった。カプセル内視鏡は少なくとも現時点では小腸内部の撮影・診断を目的としたものであり,食道,胃,十二指腸,大腸などは偶然にきれいな写真が撮れることはあっても安定した診断診断の手段とはなりえない。言われてみればなるほどという気がしたが,それまではなんとなく口から入れるのだから,通過点の写真はみな撮れるんじゃないかと思っていた。

現在のカプセル内視鏡は,それ自身に移動する機能がないので,口から入れたあとは消化菅の動きに流されるにまかせるしかない。したがって,食道などは一瞬で通過してしまうし(それを防止するために飲み込んだあとしばらくは横になっているなどの方法も試みられている),胃や十二指腸にも長く留まっていない。逆に,消化菅に狭窄があったり,動きが悪い場合は,カプセルが滞留し,最悪の場合は,取り除くための内視鏡手術が必要な場合もあるという。また,大腸から直腸付近では残渣がカプセル周囲につききれいな画像は得られない。

それでも,うまく捉えられた場合の画像(シャッターチャンスが偶然合った場合)の鮮明さは非常にきれいで驚いた。初期の頃に比べて,1分間あたりの撮影コマ数も増えているので,あと10年もすれば小腸内視鏡はかなり普及していのではという感想を持った。

昼飯代を節約するために入ったランチョンセミナーI,「癌の分子イメージング:内科・外科治療への実用を目指した最新の画像診断技術の開発」(共催/田辺三菱製薬)は難しい内容だったが,ナノテクノロジーを利用した現在の最先端の研究内容が披露されたいへん興味深く感じた。講師のHisatake Kobayashi氏は日本の大学から米国へ留学され,その後一旦帰国した後,現在は米国の癌研究所(NCI)のBasic Science Section/Molecular Imaging Programで仕事をされている。現在の技術ではナノレベルのさまざまなサイズの分子を作り出すことができ,それらを画像診断の造影剤として使用することで,臓器や部位,細胞の様子を個別に映し出すことができるそうだ。つまり,臓器や部位,細胞の種類(癌細胞か癌細胞でないかなど)によって透過・拡散しやすいサイズの分子が違うので,それらを組み合わせることで特定の部位の画像が鮮明に映し出されるというわけだ。

乳癌手術などの際,リンパ節郭清の要不要を判断するために(全身への転移の有無を判断するために)センチネルリンパ節への転移の有無(陽性/陰性)を調べるが,その考えが正しいこと,つまり,転移癌では本当にリンパ節にまで癌細胞が転移していることが画像で証明され,これは大きなニュースとなったそうだ(知っているひとはすでに知っていることなのだろうがわたしは知らなかったので感心した)。

ナノテクノロジーは米国では将来の研究分野として国家戦略の1つに指定されているそうだ。そのNCIで日本人研究者が活躍しているのはすばらしいことではあるが,なんとなく日本大丈夫か,という気持ちにもなった。

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