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2008年4月

2008年4月14日 (月)

「親の『ぼけ』に気づいたら」感想

「親の『ぼけ』に気づいたら」(斎藤正彦著,文春新書)という本を読んだ。著者の斎藤氏は,高齢者の精神医療を専門とする医師で,現在,よみうりランド慶友病院で副院長をしている。実際の患者さんをモデルにした架空のストーリーを軸に,さまざまなエピソードや解説を交えた構成で,読みものとしておもしろく,しかも深く考えさせられる内容の本だ。

この中で斎藤氏は,抽象的な概念で<痴呆老人>を一般化することを強く諌めている。介護やケアのあり方についても,あくまでも,個々の患者さんの性格や置かれた環境(家族の状況も含めて)にもどつき,それぞれの家族が自分たちに最も適した介護の仕方を考えるべきであるとしている。これは,あたりまえと言えばあたりまえ過ぎることであるが,ともすればマニュアル的な解説本が多いなかで,特に新鮮に感じた。もちろん,実際の介護に役立つ知識やアドバイスも豊富に記されている。

また,正しい知識と冷静な判断力の重要性,そして,介護側の人々の健康,幸せの維持が長期におよぶ介護をうまく続けるための鍵だしている。これも,それだけ読むと特に目新しい感じはしないが,この本を通読するとその重要性が説得力を持って伝わってくる。

痴呆性疾患にかかった身内に対する対処の仕方が中心の本であるが,病気の種類に関わりなく,高齢の親の介護に直面せざるを得ない現代のわれわれにとって大切な教訓や情報がつまった一冊だと思う。

尚,初版が平成17年1月ということも関係しているのかもしれないが,この本では「認知症」という言葉は,「初めに」の章でそれを使っていない理由を説明している箇所を除いて使われていない。

2008年4月10日 (木)

機内で携帯通話必要?

4月8日(火)の朝日新聞に載っていた短い記事がちょっと気になっている。気になっているというより「なんじゃこりゃ?」という感想だ。

「EU圏,機内で携帯OK」という見出しでブリュッセルの特派員(井田香奈子氏)の記事だ。欧州連合(EU)の欧州委員会が飛行機内でも携帯電話が使える新しい仕組みの導入を決めたというニュースで,乗客の9割が携帯電話を機内に持ち込んでおり,市場は大きい(欧州委員会)と書いてある。仕組みは,地上からの電話を各携帯電話が直接受けるのではなく,飛行機が持つネットワークを介するので運行の妨げにならないということらしい(飛行機が中継点になるということだろう)。

記事によると,電話使用のルールは各航空会社に委ねられており,各航空会社が時間制限を設けたり,メールの使用のみにしたり,通話用スペースを設ける,などの工夫をすることになるという。

メールの使用はともかく,飛行機の中にいて電話で話さなければならない用事のある人がいったいどれだけいるというのだろう。もうかなり前からビジネスクラスはもちろん,エコノミーでもちょっと新しい機体なら,座席横についているビデオ操作用のコントローラーに電話(クレジットカードで支払う)が付いているが,あれを使って話している人をわたしは見たことがない(自分自身はためしに使ったことはある。1~2分のそれこそお試し使用だった)。

そもそも「乗客の9割が携帯電話を機内に持ち込んでおり,市場は大きい」と本当に欧州委員は本当に思っているのだろうか。客は携帯を機内に持ち込んでいるわけじゃなく,携帯を持っている人が9割いるというだけのことだろう。携帯電話なんだから,飛行機に乗るときにわざわざそれを預けいれ荷物に移すわけがない。

2008年4月 1日 (火)

WHI中止から3年でも残るがんリスク

2002年にWomen's Health Initiative(WHI)試験が中止され大ニュースになったが,中止後約3年経過した後の,ホルモン補充療法(HRT)群とプラセボ群の経過を報告した論文が再びJAMAに掲載された

WHIはHRT(結合型エストロゲン[CEE;正確には結合型ウマエストロゲン]0.625mg + プロゲスチン[medroxyprogesterone]2.5mgを毎日服用)群とプラセボ群に割り付けられた約16,000人を比較検討した大規模試験で,5.6年経過後,中止された。

理由はHRT群に冠動脈疾患,脳卒中,血栓症,乳癌(浸潤性)リスクが有意に高いことが明らかになったからだ。一方,骨粗鬆症や結腸・直腸がんの発症リスクはHRT群で低くなっていた。

今回,WHI中止時に試験に登録されいた女性のほぼ95%を平均2.4年追跡調査したところ,冠動脈疾患,脳卒中,血栓症,骨粗鬆症,結腸・直腸がんの発症率は,WHI開始時点と同程度に戻っていたらしい。つまり,HRTのリスクもベネフィットも,HRTを中止して3年経過した時点では消失していた。

ところが,がん全体の発症リスクはHRT群に割り付けられていた女性で有意に24%高く,乳癌も元プラセボ群よりも高い罹患率が確認された(こちらは有意差なし。HR = 1.27,95%CI = 0.91~1.78)。

また,global index of risks and benefits(総合的なリスク/ベネフィット評価)も元HRT群で12%高かった(=よりリスクが高い)。

ちょっと怖いのは,元HRT群のなかでも服薬コンプライアンスが最も高かった群の女性では,試験中止後の全因死亡率(all-cause mortality)が元プラセボ群よりも53%も高いことである。

日本ではもともとHRTは普及していなかったので大きな問題にはなっていないが,アメリカでは結合型エストロゲン(プレマリン)は何年間か,売上高ナンバーワンの薬だっただけにWHIの「後遺症」はまだ残る可能性があるだろう。

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