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2008年8月22日 (金)

政治問題の様を呈してきたVytorin(ENHANCE,SEAS)-「Ca拮抗薬」論争の再演か?

Vytorinという薬に特別な興味や思いいれがあるわけではもちろんないが,このブログでも2回ほど関連ニュースを取り上げたのでネットを眺めていてもついついこの薬に関する情報に眼が行ってしまう。medpageというニュースサイトを見ていたら,SEAS試験でVytorin(ezetimibe/simvastatin)群の癌発症率が有意に高かったことに関して,3か月以内にFDAが報告書を受け取り,さらに6か月かけてそのデータをレビューすることになったという記事が載っていた(つまりFDAの最終見解が出るのは9か月後)。

2週間ほど前,アメリカ民主党の下院議員,John DingellとBart Stupak(ともにミシガン州選出)がFDAにVytorinと癌との関係に関するデータを提出するよう求めたという。FDAに対してレポートの提出を要請されているのはもちろんMerck/Schering-Ploughだが,それでもSEASの最終結果は,9月に開かれる欧州心臓病学会(ESC)で発表が予定されている。

医学的なことに関する判断を下す資格や能力はわたしにはもちろんないが,ENHANCEに始まる一連の大騒ぎのニュースを断片的に読む限り,どうもこの薬は「政治問題」となってしまったような気がする。このような状況で,冷静かつ客観的な科学的判断など行われるのだろうか。

ここで突然,Ca拮抗薬を投与した患者の心筋梗塞発症率が却って上昇するということで大騒ぎになった「Ca拮抗薬論争」を思い出してしまった。あれは1995年だったと思うが,ワシントン大学(シアトル)のPsaty教授とBowman Gray医科大学(だった思う。記憶不確か)のCurt Furburg教授が,このニュースを発表して全米のメディアでセンセーショナルに取り上げられた。あのときも,第一報は学会での発表ではなく,Psatyらが学会とは関係なく記者会見を開いて発表し,まず大騒ぎになった。もっとも,あれは生物統計学者(biostatistician)であるFurburgらが行った過去の試験のメタアナリシスの結果であった。Ca拮抗薬論争といいながら,実は槍玉にあげられていたのはニフェジピン(特に短時間作用型の舌下錠)だった。あの論争から1年くらい経過してからは,ライバル薬であるアムロジピン(長時間作用型のCa拮抗薬)の売上げが着実に伸び,なんともきな臭い印象を抱いたのを思い出す。

実は1995年の11月の米国心臓協会(AHA)でわたしはこのFurburgとOschner Clinic(ニューオリンズ)のFranz Messerli博士とのディベートを取材した経験があり,Dr. Messerliには1996年3月の米国心臓病学会(ACC)でインタビューもしたのでよく覚えているのだ。AHAのディベートでは反Ca拮抗薬であるはずのFurburgがメタアナリシスの不備などをMesserliに徹底的に指摘され,Furburgが晒し者にされているような感じだった。

まあ,Ca拮抗薬論争と一緒にするのは強引なわたしの勝手な妄想かもしれないが,SEASも先月,ロンドンで突然記者発表がありメディアで大きな話題になっている。しかも,Oxford大学のRichard Peto博士という生物統計学者が“スポンサー側”の研究者としてその中立性を疑問視する声も出ている。

今回,Merck,Schering-Ploughに対してFDAへレポートを出すよう求めるレターを出した上記の下院議員が2人ともミシガン州の民主党議員というところから,わたしの妄想はさらに膨れ上がってしまっている。ミシガン州はオハイオ州と隣接しているし,オハイオ州はクリーブランドクリニックのNissen博士のいる州だし......。

いずれにしても,騒ぎはまだしばらく続きそうである。

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