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2008年9月17日 (水)

学会取材-米国骨代謝学会(ASBMR)

モントリオールで開かれている第30回米国骨代謝学会(ASBMR)に来ている。今回は某社の仕事で(学会にはいつもどこかから仕事を請け負って来ているので,常に「某社の仕事」だが)現地で原稿を書く学会速報なので,昨日までは本来の取材と原稿書きで精一杯で,仕事と直接関係ないセッションを聞く余裕はほとんどなかった。もっとも,ディベートやプレナリーシンポジウムなどいくつかのセッションは聴講したが,骨代謝は不勉強なので難しい。基礎的な演題が多いのもこの学会の特徴だが,抄録に目を通してもスライドを見ても,略語の羅列ばかり。英語だからよけいにわかりにくいということもあるが,日本の骨代謝学会を以前取材したときもチンプンカンプンだった記憶がある。こんなことを書くと仕事の発注元に怒られそうだが,仕事で書いた原稿も「心底理解して」書いたものはない。専門医の先生が監修者として同行して下さっているので,最終原稿は間違いのないものになっているはずだが.....。

今日は学会最終日で午前中で学会も終了した。仕事以外で聞いた発表で記憶に残っているものについて少し書いておく。

#1285 Effect of Denosumab vs Alendronate on Bone Turnover Markers and Bone Mineral Density Changes at 12 Months Based on Baseline Bone Turnover Level. CHUQ Laval University (カナダ・ケベックシティー)のJ.P. Brown氏の発表で,DenosumabとはRANKLに対するヒトモノクローナル抗体(抗体薬)だ。5月のASCO(米国臨床腫瘍学会)の取材の際,「時代はまさにtinib-mab」という感想を持ったがこれは何も癌の領域だけではないらしい。RANKLは破骨細胞の分化誘導因子で,それを抗体で阻害するわけだから,骨吸収を抑制する薬である。現在,臨床応用されている骨吸収抑制薬はビスフォスフォネート(Alendronateもその1つ)という種類の薬が中心だが,Denosumabは新しい作用機序の薬ということになる。Amgenの資金でなされた研究というdisclosureがあったので,DenosumabはおそらくAmgenの開発した薬なのだろう(違っていたらゴメンナサイ)。びっくりしたのは,Denosumabは60mgを半年に1回注射するだけという点だ。Alendronateは週1回の内服薬。この両薬を互いのプラセボを併用して(つまり,Denosumab + Alendronateのプラセボ群 vs Denosumabのプラセボ + Alendronate群)12か月後の骨密度(BMD)の変化をベースラインでの骨代謝レベル(代謝マーカーで評価)別に検討した試験。結果は,Denosumab群のBMD増加がどの部位(腰椎,大腿骨頸部,橈骨)でもAlendronateよりも有意に大きいというものだった。ベースラインでの骨代謝回転が高い患者群のほうがBMDの増加が大きかったということだが,これはまあ,当然だろう(Alendronateでもこの点は同じ)。

Denosumabに関しては#1286 A Phase III Study of the Effects of Denosumab on Vertebral, Nonvertebral, and Hip Fracture in Women with Osteoporosis: Results from the FREEDOM Trial という演題がSan Francisco Coordinating Center, CPMC Research & Institute & USCF(米カリフォルニア州サンフランシスコ)のS. R. Cummings氏から発表された。FREEDOMとはFracture Reduction Evaluation of Denosumab in Osteoporosisの略(acronym)だそうだが,海外(特に米国の)臨床試験はこの略語作りに妙にこだわっている気がする(中年オヤジの駄洒落好きに通じるものがあるという気がするのはわたしだけだろうか)。FREEDOMは骨粗鬆症女性を対照に,32か国,214の臨床施設が参加している試験で,最終解析対象がDenosumab群3902例,プラセボ群3906例。結果は3年間で大腿骨股関節骨折がDenosumab群で40%プラセボより減ったというもの(だったと思う。この発表中,強い眠気に襲われほとんど寝ていたのでメモがきちんと取れていない)。

#1291 A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study of Odanacatib (MK-822) in the Treatment of Postmenopausal Women with Low Bone Mineral Density: 24-Month Results. というのは,カテプシンKの選択的阻害薬(こちらは抗体じゃないので,小分子の分子標的薬ということであろう)で,MKというコードからも推測されるとおり,メルクの薬だ。Oregon Osteoporosis Center(米オレゴン州ポートランド)のM. McClung氏が発表した。閉経後女性(腰椎のBMD Tスコア<= -2.0)を対象とした第II相試験で,これもプラセボに比べて腰椎BMDの有意な増加が認められた。

(以上3題は最終日の臨床オーラルセッションで発表されたもので,このほかにも数演題聞いたが,買い物に行く時間がなくなるのでこのあたりでやめておきます)。

また,学会初日(12日)にはASBMR/ECTS CLNICAL DEBATE: Monitoring the effects of treatment of osteoporosis-Is it worthwhile? というのがあり,これは結構おもしろかった。開始前のQ&Aシステムを使った聴衆の答えは84%がYes(モニタリングはやる意義がある)でNoは16%だったが,ディベート終了後の回答では,Yesは53%に減り,Noが47%になっていた。ディベートセッションはどの学会でも,聴衆を楽しませる半分余興のような要素があるものの,このような命題が立てられること自体が,骨粗鬆症における「治療効果」というものの曖昧さを意味するものだとわたしは理解した。

昨日(15日)の朝一番のプレナリーシンポジウムでは,東大のShigeaki Kato先生によるMolecular Switching of Osteoblastogenesis vs Adipogenesisというタイトルの講演を聞いたがこれなどもう全く理解できない難しい内容であった。間葉系細胞から骨芽細胞あるいは脂肪細胞への分化がどのタイミングで決定され,その決定を規定する因子はどういうものか,というような話であったとは思う。Wntの非古典的経路(non-canonical pathway)というのに未解明な部分がまだ残っており,それとPPAR-γ(αだったかも?)が関係しているというような話だった気がする。

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