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2008年9月

2008年9月30日 (火)

季節の変わり目-体調不良

季節の変わり目は体調を崩しやすいと言われるが,わたしもきまって調子が悪くなる。やはり温度の変化が大きい日々が続くと風邪を引くことが多い。ASBMRから戻った後,ここ10日間ほど風邪ぎみで仕事がはかどらない。26日は大阪の乳癌学会を取材したが,依頼された演題を取材しただけでそれ以外のセッションに入る気力を持てなかった。

体調が悪いときは物事を悲観的に考えがちになるが,今のわたしもそんな気分だ。冷静に考えると客観的な状況は1か月前となにも変わっていない(仕事の状況は,8月下旬頃に9~11月の仕事がある程度決まり,その後,大幅に増えてもいないがキャンセルも発生していない)のに,自分の能力や今後のことが不安になってくる。おそらく,体調の悪さが体力の衰えと結びつき,「老い」を連想させるからだろうか。こんなとき,街を歩くと健康でノーテンキなやつらばかりと感じてしまうから体調が精神に与える影響はやはりバカにできないと思う。

徒然草の「友とするに悪きもの七あり」といううろ覚えの一節が何故か浮かんできた。書棚の文庫本を探して出してきたら,悪きものとして「一には高くやんごとなき人,二には若き人,三には病なく,身強き人」とある。確かに,健康優良児の鈍感野郎とはつきあいたくない。

実はわたしは占いが嫌いではなく,週刊誌の占い欄などがあると必ず読んでしまう。週刊現代は占いコーナーだけが目当てで毎週買っているようなものだ。ほかにも,週刊朝日にも占いコーナーがあるし,新聞でも朝日新聞夕刊の占い欄はほぼ毎日目を通している。昔は手相の本を何冊か買って,勉強したこともある。新宿の母には観てもらったことはないが,サンシャインの母には占ってもらったことがある。女性ならともかく,男が占いなどと書けばたいていはバカにされるのがオチだが....。

2008年9月17日 (水)

学会取材-米国骨代謝学会(ASBMR)

モントリオールで開かれている第30回米国骨代謝学会(ASBMR)に来ている。今回は某社の仕事で(学会にはいつもどこかから仕事を請け負って来ているので,常に「某社の仕事」だが)現地で原稿を書く学会速報なので,昨日までは本来の取材と原稿書きで精一杯で,仕事と直接関係ないセッションを聞く余裕はほとんどなかった。もっとも,ディベートやプレナリーシンポジウムなどいくつかのセッションは聴講したが,骨代謝は不勉強なので難しい。基礎的な演題が多いのもこの学会の特徴だが,抄録に目を通してもスライドを見ても,略語の羅列ばかり。英語だからよけいにわかりにくいということもあるが,日本の骨代謝学会を以前取材したときもチンプンカンプンだった記憶がある。こんなことを書くと仕事の発注元に怒られそうだが,仕事で書いた原稿も「心底理解して」書いたものはない。専門医の先生が監修者として同行して下さっているので,最終原稿は間違いのないものになっているはずだが.....。

今日は学会最終日で午前中で学会も終了した。仕事以外で聞いた発表で記憶に残っているものについて少し書いておく。

#1285 Effect of Denosumab vs Alendronate on Bone Turnover Markers and Bone Mineral Density Changes at 12 Months Based on Baseline Bone Turnover Level. CHUQ Laval University (カナダ・ケベックシティー)のJ.P. Brown氏の発表で,DenosumabとはRANKLに対するヒトモノクローナル抗体(抗体薬)だ。5月のASCO(米国臨床腫瘍学会)の取材の際,「時代はまさにtinib-mab」という感想を持ったがこれは何も癌の領域だけではないらしい。RANKLは破骨細胞の分化誘導因子で,それを抗体で阻害するわけだから,骨吸収を抑制する薬である。現在,臨床応用されている骨吸収抑制薬はビスフォスフォネート(Alendronateもその1つ)という種類の薬が中心だが,Denosumabは新しい作用機序の薬ということになる。Amgenの資金でなされた研究というdisclosureがあったので,DenosumabはおそらくAmgenの開発した薬なのだろう(違っていたらゴメンナサイ)。びっくりしたのは,Denosumabは60mgを半年に1回注射するだけという点だ。Alendronateは週1回の内服薬。この両薬を互いのプラセボを併用して(つまり,Denosumab + Alendronateのプラセボ群 vs Denosumabのプラセボ + Alendronate群)12か月後の骨密度(BMD)の変化をベースラインでの骨代謝レベル(代謝マーカーで評価)別に検討した試験。結果は,Denosumab群のBMD増加がどの部位(腰椎,大腿骨頸部,橈骨)でもAlendronateよりも有意に大きいというものだった。ベースラインでの骨代謝回転が高い患者群のほうがBMDの増加が大きかったということだが,これはまあ,当然だろう(Alendronateでもこの点は同じ)。

Denosumabに関しては#1286 A Phase III Study of the Effects of Denosumab on Vertebral, Nonvertebral, and Hip Fracture in Women with Osteoporosis: Results from the FREEDOM Trial という演題がSan Francisco Coordinating Center, CPMC Research & Institute & USCF(米カリフォルニア州サンフランシスコ)のS. R. Cummings氏から発表された。FREEDOMとはFracture Reduction Evaluation of Denosumab in Osteoporosisの略(acronym)だそうだが,海外(特に米国の)臨床試験はこの略語作りに妙にこだわっている気がする(中年オヤジの駄洒落好きに通じるものがあるという気がするのはわたしだけだろうか)。FREEDOMは骨粗鬆症女性を対照に,32か国,214の臨床施設が参加している試験で,最終解析対象がDenosumab群3902例,プラセボ群3906例。結果は3年間で大腿骨股関節骨折がDenosumab群で40%プラセボより減ったというもの(だったと思う。この発表中,強い眠気に襲われほとんど寝ていたのでメモがきちんと取れていない)。

#1291 A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study of Odanacatib (MK-822) in the Treatment of Postmenopausal Women with Low Bone Mineral Density: 24-Month Results. というのは,カテプシンKの選択的阻害薬(こちらは抗体じゃないので,小分子の分子標的薬ということであろう)で,MKというコードからも推測されるとおり,メルクの薬だ。Oregon Osteoporosis Center(米オレゴン州ポートランド)のM. McClung氏が発表した。閉経後女性(腰椎のBMD Tスコア<= -2.0)を対象とした第II相試験で,これもプラセボに比べて腰椎BMDの有意な増加が認められた。

(以上3題は最終日の臨床オーラルセッションで発表されたもので,このほかにも数演題聞いたが,買い物に行く時間がなくなるのでこのあたりでやめておきます)。

また,学会初日(12日)にはASBMR/ECTS CLNICAL DEBATE: Monitoring the effects of treatment of osteoporosis-Is it worthwhile? というのがあり,これは結構おもしろかった。開始前のQ&Aシステムを使った聴衆の答えは84%がYes(モニタリングはやる意義がある)でNoは16%だったが,ディベート終了後の回答では,Yesは53%に減り,Noが47%になっていた。ディベートセッションはどの学会でも,聴衆を楽しませる半分余興のような要素があるものの,このような命題が立てられること自体が,骨粗鬆症における「治療効果」というものの曖昧さを意味するものだとわたしは理解した。

昨日(15日)の朝一番のプレナリーシンポジウムでは,東大のShigeaki Kato先生によるMolecular Switching of Osteoblastogenesis vs Adipogenesisというタイトルの講演を聞いたがこれなどもう全く理解できない難しい内容であった。間葉系細胞から骨芽細胞あるいは脂肪細胞への分化がどのタイミングで決定され,その決定を規定する因子はどういうものか,というような話であったとは思う。Wntの非古典的経路(non-canonical pathway)というのに未解明な部分がまだ残っており,それとPPAR-γ(αだったかも?)が関係しているというような話だった気がする。

2008年9月 1日 (月)

学会取材-日本受精着床学会

8月28日と29日,福岡で日本受精着床学会が開かれた。わたしは某社からの依頼で28日に発表のあった数演題を取材したが,依頼された取材で結構バタバタしていたのと体調不良(前日の夜に福岡入りしたもの何故か一睡もできずほぼ徹夜でホテルの朝を迎えた)が重なり,どうも積極的な聴講ができなかった。記憶も薄れてきたが,いくつかの演題/講演について,感想を書いてみよう。

教育講演1-02 「生殖補助医療とインプリンティング異常」(東北大学未来工学医療開発センター 有馬隆博氏)は,タイトルを見てすぐに聞いてみたいと思った講演だった。これまで,生殖補助医療(ART)による妊娠で生まれた子の先天異常有病率は自然妊娠で生まれた子のそれと変わらないとされ,それをサポートする研究もいろいろ発表されてきたが,最近,ART出生児に周産期合併症の発生頻度が高いという報告がいくつか出てきているそうだ。

そのくらいの知識はわたしも持っていたのだが,ARTで生まれた子に自然妊娠で生まれた子よりも多く発生するのはインプリンティング遺伝子という遺伝子になんらかの異常が後天的(エピジェネティック)に加わるからではないかという説があるらしい。インプリンティングとは刷り込みのことだが,鳥は生後最初に目にした対象を自分の親と思い込む,という程度のことしかわたしには思いうかばなかった。有馬氏の講演は,インプリント遺伝子というものがどういうものであるかから始まり,それが発生のどの段階で獲得されるか,インプリント遺伝子異常によって起こるインプリンティング病にはどのようなものがあるか,ARTとインプリント遺伝子異常との関係など,広範囲にわたったが,正直,難しくてよくわからなかった。インプリント遺伝子というのは,発生の早い段階で,父親由来のアレル(対立遺伝子)もしくは母親由来のアレルのみが発現されるよう選択される遺伝子のことであるらしく,その数は全ゲノムのなかである一定のパーセント(1%だったか0.5%だったか今は思い出せない)は存在するらしい。

そのインプリント遺伝子に異常がある場合に発生するのが,Beckwith-Wiedemann 症候群,Angelman 症候群,Prader-Willi症候群といったインプリンティング病だ。DeBaunという研究者が米国におけるART治療後のBeckwith-Wiedemann 症候群が4.1%,一方,一般集団における発症率は0.76%と2003年に報告しており,それだけを聞くと怖い気がする。もっとも,これらの症候群は,もともとの発症率が10000~20000人に1人程度の率なので必要異常に神経質になる必要は現時点ではないのかもしれない。

ランチョンセミナーは,「メタボリック症候群と生殖機能」(演者:九州大学病態制御内科 准教授,柳瀬敏彦氏)を聞いた。受精着床学会の内容とはあまりかぶらない,メタボリック症候群の基準値の問題点などの話が前半にあり,後半ではDHEA(いわゆる若返りホルモン)の値と寿命の関係などが示されおもしろかった。メタボ基準では女性の腹囲基準が90cmというのがおかしいこと(90cmとカットオフ値とすると,メタボになる女性は数%しかいなくなってしまう)は日本の多くの研究者の追試によってもほぼ証明されているらしく,わたしの理解が正しければ,日本の女性の場合は78~80cmあたりが適切な値のようだ。一方,男性の場合は85はちょっと厳しく87cm程度が適切な値という印象を受けた。ま,いずれにしても,現在の日本の基準値はやはり早晩,修正を余儀なくされるのではないだろうか(国際糖尿病学会[IDF]やその他海外学会からも日本の基準は奇異に見られているようだ)。

諏訪マタニティクリニック院長,根津八紘氏の「実母により代理出産」の発表も聞いた。この発表については,学会の前にすでに新聞などで報道されており,また,最新の「女性自身」などでも取り上げられているが,根津氏自身がクリニックのホームページでコメントを載せている。実母が娘の子供を代理母として妊娠し,生むというのはそこだけ読むとセンセーショナルな内容だが,まず患者(依頼母)はロキタンスキー症候群という生まれながらに子宮がない(あるいは機能しない)女性か子宮癌などで子宮全摘手術を受けた女性であり,自分の子供を持つ残された手段としては現在のところ代理母しかないのは理解できる。「自分の子供」と書いたが,わたしが一番疑問だったのはこの点だった。根津氏の場合,患者(依頼母)夫婦の配偶子(女性の卵子と夫の精子)を使った代理母出産に限定しているようであり,この点もわたしには抵抗なく受け入れられた。ただ,実母とはいえ55~60歳の女性が妊娠・出産することについては,控えめに言っても「驚き」というのが正直な感想だ。

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