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2008年11月 9日 (日)

学会取材-米国腎臓学会(ASN 2008)-①

オバマ氏が大統領に選出された11月4日からフィラデルフィアに来ている。第41回米国腎臓学会(ASN 2008;Renal Week 2008)取材のためだ。学会速報の仕事で来ているので本来の仕事以外に書き物をしている時間が取れなかった。とはいえ、仕事で取材義務のある演題本数はそれほどなかったので、初日(6日)と2日目(7日)の空き時間はいくつかのセッションに入った。

オープニングプレナリーセッションでの会長(Peter S. Aronson氏、Yale University)講演は、米国の腎疾患、特に透析に至る末期腎疾患(ESRD)患者の現状、推移と医療費の問題などを説明した内容でわかりやすく、また興味深く聞いた。

ESRDに関する医療費は米国の経済の年間成長率を3%上回る速度で増大しており、このままで行くと米国のGDPの30%をESRDだけに費やすことになり、メディケアの資金も2019年に枯渇してしまうことが明らかだという。2005年のESRDに対する医療費が300億ドル(3兆円)というのだから驚きである。保険制度や医療制度が日本と異なるので、日本との単純な比較はできないが、透析患者が毎年増えている状況は日本も同じだから、他人事ではないと感じた。

年代別にみると、透析患者数の最も多いのは45~64歳だそうだが、増加率の最も高いのは75歳以上だという。これも日本に関係のある数字だろう。

目からうろこだったのは、メディケアが新規のESRD患者を40例/100万人/年と予測していたのに対し、現在は400例/100万人/年が新規にESRDになるという話だ。日本の厚労省の出生率予測の誤り(その誤った数字を基に将来の年金予算などを計算していること)などが時々批判されるが、役所はどこの国も同じだなあと思った。いや、そもそも、今の透析患者の増加状況を予測できなかったのは仕方ないのかもしれない。

高齢化と透析患者数の急増とはもちろん関係しているが、これに関して、Aronson氏は、高齢で透析を開始しても(生命)予後はそれほどよくないというグラフを示しながら、“ineffectiveness of dialysis”について注意を向けるべきだと指摘した。そして、“Healthcare system must emphasize cost-effectiveness as well as quality of life”と言っていたと思うが、ようするに「無駄な透析が多い。一定の年齢以上の患者には透析をやっても金の無駄」というのが本音ではないかと思った。

ただ、最後はやはりASNの会長なので、研究者主導による腎臓病研究の発展でブレークスルーを実現することを期待するというような内容のメッセージを述べ、そういう例として、H.pyloriの発見でノーベル賞をとったBarry Marshallや子宮頸癌の原因となるヒトパピローマウイルスの発見で今年のノーベル賞を受賞したHarald zur Hausenなどの写真を示していたが、これはちょっと違うんじゃないかと思った。Hピロリの発見やパピローマウイルスの発見はすばらしい業績だが、どちらも感染症だ。発見してしまえば、予防は相対的に簡単だ。ピロリなんて何年か後には感染者がうんと減るんじゃないだろうか。それに比べて、腎臓(CKD)はノーベル賞級の発見の1つや2つで解決する問題ではない気がする。

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