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2009年1月19日 (月)

「派遣切り」に対する報道に思う-その1

昨年末から今年にかけて景気低迷と雇用情勢の悪化に伴い,非正規雇用者の「解雇」に関する新聞や雑誌の記事,テレビ番組が多くなった。昨晩もNHKで派遣契約を契約期間終了前に切られた人のドキュメンタリーが放送されていた。わたしは自己韜晦ではなく,フリーランスという今の立場は日雇い労働者と全く変わらないと思っているので,心情的には,「派遣切り」に対する批判的報道の肩を持ちたい気分である。

しかし,大きく報道される世の中の事象すべてに共通していることだが,どうも問題が整理されないままの記事や報道が多いような気がする。疑問を感じる点が多いのだ。

そもそも,「派遣切り」と言われているもののなかには,契約満了に達していないのに企業の業績悪化などの都合で一方的に契約を切られる,明らかに違法な「派遣切り」があるらしい。正直なところ,法律の知識に乏しいのでこのあたりはそうだ言われればそうですか,と返事するしかわたしにはできないのだが,一つ想像するに,労働者派遣法(今一番問題になっているのは,工場などで派遣として働いている労働者の問題だ)というものが,十分議論されないまま成立した法律なので,現在のように急激に景気が悪くなってきた場合の企業や労働者の権利義務関係についてきちんとつめられていないのではないだろうか。そうでなければ,いくら業績が悪くなったからといって契約満了の前に一方的に「切る」というような,いわば確信犯的な行動を普通の企業が取るとは思えない。これは,企業が良心的だとかそういう意味ではなく(後にも書くがそんなことは全く期待できない),損得の問題として,そんな危ない橋を渡るだろうかという疑問がある。

また,最近は労働者の派遣切りの報道がやけに多いが,労働者派遣法ができるずっと以前から,いわゆるオフィスワークに従事する派遣社員は多数いたし,今でも存在する。そういう人たちも契約満了に達した時点で更新されない例が増えているのは間違いなく,この点では,労働者派遣もその他の派遣も変わりはないはずだ。

非正規雇用者を解雇する企業の行動を批判的に論評する人や記事も少し前からたくさん見られるが,これにはかなりの疑問を感じる。そもそも,派遣社員に代表される非正規雇用の人員を企業が増やした理由は,人件費の「変動費化」というか,景気が悪くなったときに簡単にクビを切りやすいからそういう人を増やしたのではないのか。それはもちろん褒めらるような動機でも行動でもないだろうが,企業とはそもそもそういうものであり,「構造改革」とか,「新自由主義」とか,「ニューエコノミー」などという言葉で目指していたのはそういうことであろう。言い換えると,弱肉強食をできるだけ野放しにし,経済を「活性化」するということではないのか。

非正規雇用者を採用するそもそもの動機が「簡単にクビを切れる」ということにある企業経営者に対し,急に「企業の社会的責任」だとか「倫理」などを訴えてもドロボーに金を盗むなと言っているようなものだ(←この喩えはちょっと無理があるか)。

以前,このブログでも触れた月刊文芸春秋2008年5月号に載っていた記事,「大予測 五年後の『会社と社員』会社はもうかっても給料は上がらない。なぜだ?」に書かれていたと記憶しているが(記憶違いであればすいません。また,ブログのエントリーではその部分は書いていません),先進諸国で正社員とそれ以外の非正規雇用者との待遇格差が一番少ないのはアメリカで,一番大きいのは日本だそうだ。これはつまり,アメリカでは景気が悪くなると正社員であっても簡単にクビを切れるので,それほど差をつける必要がないということであるらしい。逆に日本は(ドイツやその他のヨーロッパ諸国も日本に近いのかもしれないが),正社員が守られ過ぎているからこそ,景気の変動に対応できる,安く使えてクビを切りやすい非正規雇用者が強く求められているという。

上記の記述が的外れでないとすれば,そういう経済にある日本の経営者に非正規雇用に対する人員整理を考えなおせ,といってもそれは無駄なことである。彼らのなかに,守る順番として,正社員(おそらくそれよりも自分たち役員を位置付けているであろうが),契約社員,派遣社員,パートタイマー,という優先順位が確固としてあるからだ。

しかし今後は,紆余曲折はあるにしろ,行く着く方向は「非正規雇用者の正社員化」ではなく,むしろ「正社員の非正規雇用者化」であると思うし,社会正義(?)というか公平さという意味ではそうあるべきだとわたしは思う。

ワークシェアリングということがことがすでに言われだしており,いろいろと批判的な記事を目するが,これについても的外れな批判やサラリーマンをおもな読者とする週刊誌などでは想定読者に媚びているとしか思えないような記事を読んだことがある。

長くなりすぎたのでこのあたりでやめておきます。書く気力が残っていれば次回以降に続きを書くかもしれません。

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