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2009年2月20日 (金)

香川県立中央病院の“受精卵取り違え”事故

「香川県は19日、県立中央病院(高松市)で昨年9月、不妊治療のため体外受精をした20代の女性に、誤って別の患者の受精卵を移植した可能性があるとして、約2カ月後に人工妊娠中絶をする医療ミスがあったと発表した」

時事通信が配信したこの記事をYahooのニュースで見たとき、別に驚きはしなかったが、興味は持った。すでに何回か書いているが、わたしも不妊治療に丸5年費やし、3つの病院・クリニックを経て、体外受精(顕微授精)で長男を得たので、「患者」 として不妊治療の現場をそれなりに経験している。(患者を「 」カッコで囲ったのは、いわゆる不妊症をわたしは病気だとは考えていないからだ。これについても、書きたいことはいろいろあるのだが、長くなるので今日はこの問題には触れない)。

わたしたち夫婦が通った3つめのクリニックは、不妊治療の東の横綱とも言われる東京都内の専門クリニックで、その混みようたるやすさまじいものがあった。クリニックのなかには、近くのビジネスホテルの案内や割引クーポンまで置いてあった。これはもちろん、地方から治療を受けにくる人のためだ。

採精室(要するにマスターベーションをして射精する部屋だ。エロ本やエロビデオももちろん置いてある)から出てきて、精液の入った容器を窓口に差し出したとき、どうにも不安を感じたのをいまでも思い出す。混雑している空港でスーツケースを預け入れ荷物として差し出すときのような感じに近いだろうか。

配偶者のほうの採卵は別の部屋で行われ、受精させた受精卵はシャーレに入れられ培養期で数日、育てられる。

わたしの実体験から感じた「現場感覚」だと、相当な数の受精卵や精子を長年扱っていて、取り違え事故が1件も起こらないほうがむしろ奇跡で、今回のようなケースはこれまでにも多数あるはずだ。

不妊治療における、精子や卵、胚などの取り違え事故のリスクについては、すでに以前から指摘されており、最近では「蔵本ウイメンズクリニック」(福岡市)が実施した調査が学会でも発表され話題にになった。

今回の香川のニュースを読んでわたしが興味を持ったのは、時事の記事の最後のほうにある以下のくだりだ。

<香川県によると、昨年9月中旬ごろ、担当の男性医師(61)が女性の受精卵が入った複数のシャーレを培養器から取り出し、作業台の上で発育確認と培養液の交換をした。その際、直前の作業で台に残っていた40代の患者のシャーレに女性のシャーレのふたをして培養器に戻し、数日後に受精卵を女性の子宮に戻した疑いが強いという。>

これを読むと、40代の患者のシャーレに20代の女性(今回、人工中絶した女性)のふたが使われ、40代の患者の受精卵が20代の女性に移植されたことになる。ここがどうも腑に落ちない部分だ。今回の“被害者”が40代で、20代の女性の受精卵が誤って40代の女性に移植され、40代の女性が20代の女性の受精卵で妊娠してしまった、というのなら理解しやすいのだが.....。40代の女性の受精卵と20代の女性の受精卵では、妊娠確率は全然違うはずだからだ。もちろん、20代の女性の受精卵の妊娠確率が高く、40代の女性のそれは低い。

今回人工妊娠中絶したこの女性が身ごもっていた赤ちゃんは、結局は、自分の卵子による赤ちゃんだった可能性も結構高いんじゃないかという気がする。

毎日新聞の記事を読むと、<高松市の香川県立中央病院で19日明らかになった、不妊治療中の体外受精卵の取り違え疑惑。「誰の受精卵か確認できないのか」。治療を受けた20代女性は昨秋、ミスを告げられて人工中絶したが、病院側は中絶の前、出産に希望をつなごうとする夫婦の質問に「6週間後なら分かるが、その時に中絶すると母体に負担が大きい」と説明していた。待ち望んだ妊娠だったのに……。夫婦は3日後、中絶を決意したという。> とある。

確かに、<中絶した時は妊娠9週目だった>とあるので、さらに6週間待ってからであれば、妊娠15週か16週目。遅いほうが医学的にリスクが高いのは間違いないだろうが、少なくとも法律上は21週まで中絶は可能なはずだから、もう少し待ってもよかったんじゃないかという感想を持った。

少し勘ぐると、病院側が、事を穏便にすませたいために、人工中絶に同意するようこの夫婦を誘導尋問的に説得したんじゃないかと思ってしまう。

昨年9月に妊娠し、約2か月後に人工妊娠中絶をしたということなので、中絶をしたのは11月か遅くとも12月初めだ。それがいまになって、<夫は県を相手に約2000万円の損害賠償を求める訴えを高松地裁に起こした>というのだから、病院側の対応になにか不誠実なものや納得いかないものがあったのではないだろうか。

いずれにせよ、いまや国内の総出生児のうち、50人に1人近くが体外受精で生まれているのだから、今後もこのような「事件」はどんどん表面化してくると思う。

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不妊治療」カテゴリの記事

コメント

ちょうど、「医療安全」の分野で、生殖補助医療を取り上げるという企画が通った次の日に、この事件が発表されました。
蔵本ウィメンズクリニックのアンケートには回答していない病院が大半で、回答した病院でもヒヤリハットは相当な数に上るということですよね。
今回の事件も病院が自主的に発表した感じがしませんね。実態がきちんと報告されないところに、大きな問題があるように思うのですが、
「プライバシー保護」ということが隠れ蓑にされている気がします。

medwriterさん,グッドタイミングじゃないですか(不謹慎ですが)。その後の報道でも病院側の対応のまずさがいろいろ出てきていますよね。体外受精が始まった当時は,病院の看護婦さんですら生まれた赤ちゃんを見て「あーら,普通の子じゃない」と言っていたとどこかで読んだことがあります。不妊治療は,「医療安全」の問題だけでなく,価値観や偏見ともからむ問題を含むので今後もいろいろ話題になると思いますよ。

久しぶりにブログのぞかせていただきました!

私も夫の精液が入った紙コップを窓口に差し出すたびに,「大丈夫なのかな~」と思ってました。
あのセレブ病院も,ご存知の通りいつも数時間待ちで,ようやく名前を呼ばれたと思ったら複数のDrのうち空いたところにあてがわれ,数分で診察や「治療」(うちの場合AIH)を済ませる,という感じで,まるでベルトコンベアーのようだと感じました。
ほんとにうちの夫の子なのかしら,とDNA検査でもしようかと思ったこともありましたが,最近は「かわいいから誰の子でもまあいいや」という感じです。

不妊治療は受けている人がたくさんいるわりにオープンに語られる機会が少なく,
それに従事する人たちの間でも方針がバラバラなので,専門媒体でももっと取り上げるべきだと感じています・・・

ririmisaさん,コメントありがとうございます。小生も本当に自分の子どもか?という疑問を持ったこともありましたが,最近は息子が自分に似すぎてきた感じで,自分の子どもか?という不安は全く持たなくなりました。息子の将来は俄然心配になってきましたが....。不妊治療に関しては,技術的にはもうほぼ限界まできているんじゃないかといのが私の素人印象です。これからはやはり,今回のような「取り違え事故」をゼロにするようなあたりまえだけで重要なことに取り組むべきなんだと思います。

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