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2009年3月

2009年3月25日 (水)

気になる言葉の使い方-その① 「プレシャー」「開き直り」

20日と21日,日本循環器学会(日循)の取材仕事で大阪へ行っていたが,速報の仕事だったので自分の担当演題の取材とその原稿書きで手一杯で,他の演題を聴講する時間がなかった。いや,本当は時間を作れたはずだが,予想以上に原稿作成に苦戦し,いっぱいいっぱいになってしまった。情けない。(19日には,やはり大阪で開かれた国際蘇生科学シンポジウムも取材したが,その原稿はこれからだ。どうも取り掛かる前から疲れを感じる)。

昨日は,別の仕事で富山県の泊(とまり)というところへ日帰りで行ってきた。糸魚川から親不知海岸沿いを走る電車に乗って辿り着いた泊駅。人の気配の少ないさびれた感じの町並みだったが,集合時刻までに2時間近く時間があったので,ただ1つだけあった「大型スーパー」(実は小さい)に入り,フードコートのような蕎麦・うどんの店でランチの定食を食べた。ちょうどワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝戦を中継しているところで,10回表イチローのタイムリー安打まで見ることができた。野球ファンでは全然ないが,それなりに応援に力が入ったのはやはり国別対抗,という大会のせいであろう。

「気になる言葉の使い方」が全然出てこないが,その①,としたのは,今後いろいろと書いていきたいからだ。話し言葉であっても書き言葉であっても,他人の言動で気になること(内容ではなく言葉のチョイスやその使い方)というのは誰にでもあると思う。比較するデータもなければそのような試みをしたこともないのだが,わたしはそのように気になる頻度が平均より高いのではないかとずいぶん以前から感じていた。わたしのような仕事をしている人間にとって,これはむしろ必要な「資質」あるいは「感受性」だという気持ち(自負?)がある一方,どうにもやっかいな性質だなと感じることも多い。

いつまでたっても具体例に入れないが,野球の話に戻ると,野球の解説や報道にほぼ必ずでてくる,「プレッシャー」,「開き直る」という言葉はなんとかならないものかと思う。別に難しい言葉を使えと言うつもりはないが,もう少し語彙を増やしてもいいんじゃないだろうか。元選手の解説者などは,もともとそういう訓練を受けていないから仕方ないという気がしないでもないが(それでも,プロの解説者として金を取っている以上,表現・言葉の種類,使い方に気を使うべきとは思う),アナウンサーでもなんの考えもなく,「プレッシャー」,「開き直り」を連発しているのには閉口する。

2009年3月17日 (火)

最近のニュース雑感

多忙なような多忙でないような,焦燥感だけが強く,それでいて充実感のない毎日が続いている。これも季節の変わり目につきものの体調の変化と関係があるのだろうか。幸い,花粉症には全く無縁なので,そういう苦しみは感じていない。ただ,風邪をひきかけているのは間違いない。全身に悪寒が走る。

しあさってから大阪で学会取材の仕事が2つ続くのに,その準備が不十分で焦っている。ブログの更新もしばらくできそうにないので,何か書きたいがどうも気力が湧かない(平均して週1回,月に4~5回の更新を自分で“ノルマ”と決めているのだが)。そこで気になった最近のニュースの感想でも書いてみる。

米国の製薬メーカー広告費を大幅削減-2008年度 米国の製薬業界の広告費支出が2008年は18.4%減り,430億ドル(約4兆3000億円)だったそうだ。このニュースで少し驚いたというか気になったのは,Of the top 10 advertising sectors, the drug industry's, ranked second, was the largest, followed by the top-spending automotive industry's 15.5% cutback and an 11.4% drop in ad spend for motion pictures. (産業別では広告費の落ち込みが一番大きかったのは製薬業界で,2番目は自動車産業の15.5%の低下,3番目が映画産業の11.4%の低下)というところだ。(広告費の総額では自動車業界がトップ,製薬業界は2位で,削減率では製薬業界が1位ということ)。

不況で広告費が削られるのは理解できるが,製薬業界の広告費削減率が1位とは米国の話とは言え,聞き捨てならない。何故なら,わたしの仕事の量,いわば食い扶持は,最終的には製薬業界の広告費の量に大きな影響を受けるからだ。広告費の構成内容の違いはあるにしろ(米国ではテレビを使った消費者[= 患者]向けの広告[DTC]がかなり多い),製薬業界の広告費の削減率が自動車産業より大きいとは意外だった。

●「葬式の金ない」白昼の熱海、妻の遺体空き地へ これは理解に苦しむニュースだ。<15日午後0時半頃、静岡県熱海市桃山町の路上で、「男が引きずっているシートから人の足が出ていた」との110番通報があった。駆け付けた熱海署員がシートの中を調べたところ、女性の遺体があり、同署は、近くのアクセサリー販売業中村寛容疑者(59)を死体遺棄の疑いで現行犯逮捕した。><遺体は妻の愛子さん(60)で、調べに対し中村容疑者は「14日昼頃、自宅で死んでいるのを見つけた。葬式の金がなく、自宅近くの所有地に埋めようと思った」などと供述。遺体に外傷はなく、同署は司法解剖して死因などを詳しく調べる。> ということだが,葬式の金がない→自宅近くの所有地に埋めよう,という発想はどこからくるのだろうか。まだ捜査段階なので真相はわからない....。事件(自分が殺したからどこかに埋めて隠す)なら動機は理解しやすいが。ただ,この「葬式の金がない」ことまで不況のせいにして,国や市町村の対策不備を批判する報道や記事が現われないことを願うばかりだ。

●日テレ「真相報道バンキシャ!」誤報問題と社長辞任 この種のニュースは正直のところ飽き飽きというか,全く驚かない。しかし,テレビにしろ新聞・雑誌の報道や記事にしろ,自分では眉に大量の唾をつけて見たり読んだりしているつもりでも,いつのまにか無批判に信じたり,受け入れたり,影響されてたりしているので注意が必要だ。今回の社長辞任劇では,会見「取材制限」で紛糾して,会見を2回やったそうだが,こんなもの,何回やっても,同様の“事件”はまた起きるに決まっている。

買い替えで不要になるアナログテレビを2万円で買い取ってくれる? 2011年の地デジ完全移行を推進するために,追加景気対策の一環としてアナログテレビの2万円での買い取り(プラスリサイクル料)を国が負担する,という案らしい。これまた,お金をばら撒いてくれるわけで,「ありがたい」話ではあるが,一体全体,お金はどこからこんなに湧いてくるのかと疑問を感じてしまう。わたしなどは,来年,ちょうどいいい機会だから,テレビの買い替えをしないで,テレビなしの生活をしようと少し考えていたところだ(実際,30代の初め,まだ独身だった頃,テレビなしの生活を2年ほど続けたが,慣れてしまえば全く不便を感じなかった)。しかし,どうせなら2万円じゃなく,5万円くらい出してくれんかなあ。

2009年3月 6日 (金)

素晴らしい医学統計の本を見つけました

仕事がら医学統計の知識の大切さは痛感しているので,これまでにも入門書や参考書を何冊も買ったが,ほとんどが積読(つんどく)状態のままになっている。最後まで読み通せた本は1冊ぐらいじゃないだろうか。しかし,久しぶりに素晴らしい本にめぐりあった。

ドキドキワクワク論文☆吟味。医学統計ライブスタイル Book ドキドキワクワク論文☆吟味。医学統計ライブスタイル

著者:山崎 力
販売元:SCICUS
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実は先週,某社の仕事でこの本の著者である山崎先生を取材する機会があり,その折にこの本を紹介されたのだ。そのときは,本の宣伝チラシを見せてもらっただけだが,第3章の目次タイトル,

1. なんでもかんでもエンドポイント? 2.後付の解析に気をつけろ,3.複合エンドポイントに惑わされるな

を見て直感的に読みたいと思った。内容は,臨床試験の基本的用語や解釈の仕方を説明したものだが,ここ数年の実際の臨床試験を例に挙げて,個々の試験の問題点や論文を読む際の注意点などが,講義形式のスタイル(文体)で記述されている。

序文にも書いてあるが,試験名を実名で出すべきかどうか,著者は相当迷ったようである。本書を読めば迷った理由は十分理解できる。日本で実施された最近の大規模臨床試験がいくつか取り上げられており,いずれについてもかなり批判的な解説をされているからだ。

しかし,私にとってはここ数年で出会った最良の本の1冊かもしれない。難しい数式は一切出てこないが,記述内容のレベルは非常に高い。今までなんとなく疑問に感じていた点がわかりやすく解説されており,スッキリした気分だ。

「みんな知っている内容なんだけど」というようなことを山崎先生は言っておられたが,ここまで率直に書くのはたいへん勇気のいることだと思う。説明の語り口はとてもソフトで簡潔だが,内容的には非常に激しい部分がある。

例えば,ニフェジピンの心イベント抑制効果を「証明」したとされる,JMIC-B(Japan Multicenter Investigation for Cardiovascular Diseases-B)については,ランダム割付け後の除外例の多さを,SCOPE(Study on Cognition and Prognosis in the Elderly)と比較して,その問題点を指摘している。

また,日本で多く行われているPROBE(Prospective Randomized Open Blinded Endpoint)デザインの試験について,その利点と欠点を説明したあと,JIKEI HEART Studyを取り上げ,そのエンドポイントの問題点(複合エンドポイントのなかに,「狭心症による入院」,「心不全による入院」というソフトエンドポイントが含まれており,しかも,これら2つの「イベント」発生率の差が,複合エンドポイント全体の差に大きな影響を与えている)を詳しく解説している。

JIKEI HEART Studyの結果は,臨床疫学の専門家の多くが<限りなく黒に近い灰色>と言っているそうであり,著者自身も<私も,これは限りなく黒に近いと思っています。>と率直な見解を述べている。

ほかにもJELIS(Japan EPA Lipid Intervention Study)のサブ解析についての情報提供の仕方に偏りがあること(サブ解析の結果のうち[スポンサー企業の]都合のいい情報だけを発表している)にも触れている。

また,MEGA (Management of Elevated Cholesterol in the Primary Prevention Group of Adult Japanese) Studyについては,NNT (number needed to treat)  = 119,追跡期間6年という結果から,1人の患者さんを救うのに薬の値段(薬価ベース)だけで4900万円以上かかる治療が,統計学的に有意な結果であっても,果たして臨床的に有意な結果と言えるだろうか,と問題提議している。

細かく挙げていくときりがないが,ほかにもこの本には「目からウロコ」のような多くの指摘が実際の臨床試験に関連づけて紹介されている。

本の終わりのほうでは,スポンサー主導で行われる臨床試験は,結果がそのスポンサー(の薬剤)にとって有利な結果になりやすい,という不可避のバイアスについて言及し,「作られる」統計的有意差については,前東京理科大学教授・佐久間昭先生の<統計的有意差 = 薬の力 x  会社の努力>という言葉を紹介している。

以上,かなり刺激的な内容を含むが,本書全体のトーンはあくまでも冷静かつソフトであり,日本の臨床試験がより良いものに発展していくことを真摯に願う山崎先生の熱意が伝わってくる気がした。

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