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2009年12月 3日 (木)

「特別養護老人ホーム」(鈴木 栄 著)-知恵と愛情にあふれた経営姿勢に感激

鈴木 栄 著 「特別養護老人ホーム」(生活人新書)を読んだ。著者は社会福祉法人薄光会の理事長(執筆当時)で,本書は同法人が経営する三芳光陽園という特別養護老人ホームの開園(平成2年)当初から介護保険が始まった平成12年ままでの間の,同ホームでのエピソードを紹介した本である。すでに絶版になっているようだ(私もAmazonのマーケットプレイスで購入した)。

鈴木氏は知的障害のあるお子さんを2人持ち,最初は自分の子どもの老後のためを思って知的障害のある老人専門施設の開設を計画していたそうだ。結果的に三芳光陽園は,痴呆症(認知症)の老人と知的障害のある老人の両方を受け入れる施設になり,本書ではむしろ痴呆症の老人の記述が多い。

第1章から第3章まで,認知症の高齢者介護のた難しさや課題を実例をもとに具体的に紹介している。本のタイトルは「特別養護老人ホーム」だが,特養の本というよりは,高齢者介護や老人ホームのありようなどについて多くの問題を提示している。

ほほえましいエピソードもあれば気が滅入るような話もあるが,全体的には淡々と,むしろ明るいトーンで書かれている。著者の長年の経験と知恵,愛情がつまっている印象を受け,わたしの読後感は非常によかった(爽やかとはいかないが)。

第2章の「痴呆症,排尿便との闘い」の章では,まだ60代で頑健な体を持ちながら,自分で排尿便が管理できなくなった入所者とホームの職員との“闘い”ぶりが描かれている。

本書を読むと,介護は究極的には,食事,入浴,排泄の3つであり,心身が衰え,要介護状態になった人間に,これら3つを快適に提供することがいかにたいへんかをあらためて感じる。もちろん,その基礎には強い愛情がなければいけないわけだが,特養をはじめ,老人ホームや老人介護施設で働いている職員の人たちには本当に頭が下がる。

第3章は「介護保険にもの申す」という章タイトルで,介護保険開始後1年目の苦労話や役所,福祉政策に対する批判的見解が書かれている。この部分にはあまりページが割かれていないし,介護保険はすでに10年が経っているので,情報としての価値は低いかもしれないが,個別の事情を考慮した対応ができた介護保険以前の状況のほうがよかったのではないか,というような記述があり,制度的に割り切ろうとする介護政策の綻びを早くも指摘している。

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