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2010年11月 5日 (金)

学会取材-第48回日本癌治療学会-①

明日(というよりも今日)も京都まで日帰り取材があるのに,“締切遅れ仕事&遅れそうな仕事(backlog)”が処理できないまま溜まってきて疲ればかりを感じる。ブログなんぞを書いている場合じゃないのだが,そもそもブログを書く目的が「気晴らしと準備体操」だから,こういうときにむしろ書きたくなってくる。やる気が出ないときの回避手段のようでどうも忸怩たる思いだ。

とはいえ,先週,京都で開かれた癌治療学会の第1日目に開かれたシンポジウム1「分子標的薬剤の新展開」について少し書いておきたい。

このシンポジウムでは7人の演者のうち6人が,大腸がん,非小細胞肺がん,胃がん,肝細胞がん,転移性腎がん,卵巣がん,に対する分子標的薬の最近の臨床試験のデータ(国内外)とそれについての見解を発表。7人目の演者(国立がん研究センター中央病院 島田安博氏)は,「分子標的薬の功罪―がん医療のValue」というタイトルで,分子標的薬の全般について,特に最近の試験の成績の臨床的意義について疑問を呈するかたちで問題提議していた。

抄録を一読しただけで,6番目までの各論の発表内容はほぼ想像がついたし,実際に予想通りの発表内容であった。7番目の島田氏の発表のみが異質で,明らかに最近の分子標的薬の成績について否定的ニュアンス(功罪のほうの罪に焦点をあてている)が感じられたので仕事とは関係のないセッションだったが聞きにいった。少し遅れて入ったので,大腸がんの発表は質疑応答しか聞けなかったが,そのあとはすべて聞いた。

最後の島田氏の発表は,最近の分子標的薬の臨床試験では,PFSや奏効率(CR + PR)で有意差が出ても,生存率(OS)に有意な差が認められるものは少なく,有意に延長した場合でもわずかな期間であり,統計学的に有意であっても,莫大な医療費(薬剤費 + その他の治療関連費用)を考えると臨床的に意義があるかどうか,という疑問を投げかけたものだ。(奏効率の代わりに,最近ではSD[不変]も含めた CR + PR + SDを疾患制御率(Disease Control Rate)などという言葉で評価することもある)。

同氏は,英国のNICE(英国立臨床評価研究所)が,薬剤から得られるベネフィットの指標としてQALY(qulality-adjusted life years;生活の質調整年)という概念を用い,分子標的薬など,高価な薬剤の保険適応を考えなおそうとした例を紹介し,日本においても,今のままでは分子標的薬を使ったがん治療は成り立たなくなっていくのではないか,もうそろそろ,分子標的薬の現実を直視すべきではないか(副作用も当初期待されていたのとはちがって,かなり重篤なものが少なくない)といようなことを言っていた。

同氏の見解は,誤解を恐れずに書くと,(いい意味で)きわめて常識的なものであり,薬の効果というものについて生半可な雑学的知識を持っているわたしのような素人には,納得の行くものであったが,癌治療学会のようなプロフェッショナル団体ではいろんな利害関係があるので,そうでもないのであろう。

セッションの最後であり,聴衆の数が減っていたということもあるが,発表後の雰囲気は,どちらかというと「否定的沈黙」という感じであった。

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