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2011年2月 7日 (月)

「その訳はありえんだろう!」シリーズ-医学英語(和訳)を中心に-第4回-安易な定訳に抵抗したい

シリーズ第4回目。一人で勝手に書いているブログなのでシリーズ名と内容がズレていても誰も文句を言わないので気楽である。

昨日から医学ニュースの和訳仕事をやっているが一向に進まない。この能率の悪さはなんなんだ。集中力が続かないことが原因だが,ちょっとした訳語にこだわって(ひっかっかて)前へ進めていないことも能率を下げている原因の1つだ。

困ったもんだが,翻訳をやる人間としては必要なこだわりと思う気持ちもある。以前,or を「又は」とか「あるいは」としか訳さない翻訳者がけっこういて辟易するときがある,というようなことを書いたことがあるが,英和辞典にばかり頼って翻訳をしていると,こういったいわば「定訳」の羅列のような翻訳文を作ってしまうことになりやすい。

しかも,その「定訳」にもいろんなレベルがあって,「その訳はありえんだろう!」レベルから,特に抵抗なく受け入れられるレベルまである。

具体的に言うと,commonというそれこそ,非常にcommonな形容詞があり,一般的な,という訳語があてられれることが多い。しかも,それが,それほど不自然でないというか,定訳のようになっているところがある。

昨日訳していた記事では,非常にめずらしい種類のがんに対して,乳がん,大腸がん,前立腺がんなどのcommon cancersは,という文脈で使用されていた。このcommon cancerを一般的ながん,と訳そうかどうかでひっかかってしまった。一般的ながん,という言い方にどうもひっかっかったのだが,Googleで検索したところ,一般的ながん,を含む文章は無数にあり,それこそ,きわめて「一般的」だった。

一般的,の意味を国語辞典で調べてみると「広く全体を取り上げるさま。広く行き渡っているさま」(excite.辞書,大辞林第二版)とあり,この意味なら,めずらしいがん(希少ながん)に対して,乳がん,大腸がん,前立腺がんなどのcommon cancersを,一般的ながんと訳してもいいのかなあという気もした。

しかし,commonn coldとかcommon disease,になると,一般的な風邪,一般的な疾患(病気)では,ちょっと???とクエスチョンマークが湧いてこないだろうか(湧いてきませんか。ハイ)。前者は,普通の風邪(インフルエンザや肺炎などではなく,原因ウイルスや細菌は特定されないが,ほおっておいても治るような,よくある風邪,という程度の意味だろう)のこと,後者は,生活習慣病などをcommon disease(s)として使われていることが多いように思う。

前記の英語記事で,私はcommon cancerを安易に一般的ながん,とするのにどうも抵抗を感じたので,発症頻度の高い,とか,患者数の多い,とか,そういう言葉にしようとかなと考えている(考えている,というのは,その翻訳をまだ完成していないからだ)。

common = 一般的(普通の),はそれでも機械的に訳しても違和感が少ないほうだが,include,including~という英語を,含む,とか,~を含めて,と英和辞典通りの訳語を使って訳されると,かなり抵抗を感じることが多い。翻訳チェックなどをしていると,その訳者に対して(自分のことは棚にあげて)「へたくそだなあ」とか,「手抜きしやがって」と憤りを感じることが少なくない。

morbidity,という言葉にいたっては,医学論文や医学ニュースではしょっちゅう出てくる言葉だが,正直に言って,いまだにどう訳していいかわからない。辞書的な訳語は,罹患率,罹病率,だが,これをそのまま使ってスッキリする文章にであったことがない。そういいながら,morbidityは訳しにくく,わたしも,へんだなと思いながらも,罹患率とか罹病率を使ってしまうことがよくある(病的状態,という訳語もあり,morbidityのそもそもの意味,moribid state [morbidの意味は,affected by, caused by, causing, or characteristic of disease] から考えると,まさに病的状態,なのだが,これも,文脈によってもうひと工夫もふた工夫もいる気がする)。

つまるところ,日本語でそんな文章書くかあ?,自分で書くときそんな文や言葉を使うかあ?そんな言い方するかあ?そんな日本語不自然じゃないかあ?(あえて,かあ?とバカっぽく自問しています)という疑問を抱くかどうかだが,医学の分野では,翻訳文というか翻訳調があまり抵抗なく受け入れられるので,仕事として医学英語の和訳をやっている人間にとってこういうこだわりは,「労多くして益少なし」に終わる可能性が高い(のかもしれない)。

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