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2011年3月 1日 (火)

たしかにハマる,西村賢太-「苦役列車」を読みました

最近芥川賞受賞で話題になっている“平成の私小説作家”,西村賢太氏の「苦役列車」を読んだ。小説好きの人の間では,西村賢太はクセになる,などと言われているそうだが,確かに面白い。何度も声に出して笑ってしまった。

最初の1~2ページは妙に古めかしい漢字とか言葉使いが多い印象を受け(冒頭の<曩時北町貫多は...>などは,曩時の意味がわからず,曩時北町貫多というのが主人公の名前かと思ってしまった)多少抵抗を感じたが,読み進むうちにそれもなくなり,だんだんと講談を聞いているような気になってきた。

三人称で書かれているので,主人公と作者に距離はあるのだが,西村氏自身が「90%以上は実際にあったこと」とインタビューで言っていたとおり,三人称でありながら,一人称的な印象を与えるところもあり,それがまた面白い。

“社会の底辺”で希望のないその日暮らしをする青年(19歳)の話だが,実体験に基づいているリアリティーと的確な描写,そして人物に対する秀逸なコメントが笑ってしまう。

思わず声を出してしまった箇所はいくつもあるが,例えば,平和島の冷蔵団地へ行くバスのなかで隣に座った中年男がコールスローを食べるシーンで<ちょうどその男はサラダの容器に分厚い唇をつけ,底に溜まっていた白い汁みたいなのをチュッと啜りこんでいるところだったので,これには彼はゲッと吐きたいような不快を感じ,.........>というところ。思わずうなってしまった。

また,恋人も友人もいない自分の現状を<別段,それがつらいという云うわけではないが>と書いたあと,友人がいれば<何もあんなシケたところで若年寄りよろしく,ポツンと安酒飲むようなこともないのである。もっと明るく,活気に充ちた店でラビオリなぞつまみながら,サワーのグラス片手に女と女体の話で大いに盛り上がる楽しみも可能なのである。>の部分。ラビオリなぞつまみながら,には爆笑した。ここは確かにラビオリがピッタリだと思う。ポテトでもフライドチキンでもスパゲッティでもなく,ラビオリでなければならない。

そのほか,終わりのほうで,日下部とその彼女の美奈子との3人で野球を観に行ったあとの,居酒屋での日下部と美奈子との会話など,他愛ないがいかにも普通の学生同士っぽい(=バカッぽい)感じが出ていて,なんでもない内容だがうまいなあと感心した。

なお,同時受賞のお嬢様作家,朝吹真理子氏の「きことわ」はまだ読んでいない。同じ号の文芸春秋に掲載されているので,いずれ読むかもしれないが,シロガネーゼの朝吹氏の小説に対しては,読む前からなぜか“ひがみ”や“気おくれ”を感じてしまう。わたしは,苦役列車の貫多ほど,たいへんな人生を送ってきたわけではないが。。。。。

最後に余談だが,東京都知事に立候補したワタミ会長, 渡邉美樹氏の幼少期から独立するまでの「苦役列車」の話が週刊新潮だったか週刊文春だったか,どちらか忘れたが,出ていた(「苦役列車」を見出しに使っていた)。渡邉美樹氏の都知事選立候補については「なんだかなあ」と,これについても,わたしなりの感想を持っているが,埼玉県民のわたしには直接関係ないことであるし,まずはほかの人のブログを検索してみよう。

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