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2013年5月

2013年5月29日 (水)

学会取材予定-米国臨床腫瘍学会(ASCO 2013)

明日から米国臨床腫瘍学会(ASCO 2013)の仕事でシカゴへ行く。ASCOは毎年,なんらかの仕事は発生するが,学会そのものへ行くのは2009年以来だろうか。今回はメインの仕事が取材・原稿書きではなく,あるプロジェクトの編集&コーディネイションなので,あまり忙しくないだろうと少し油断していたら,出発直前になってバタバタ感がつのってきた。追加仕事も発生して,海外取材前日の<ハムレットジレンマ>にやはり陥ることになってしまった。

海外取材前日の<ハムレットジレンマ>とは,睡眠を削ってでももギリギリまで資料読みなどに時間を使うか,現地での体調を考えて早く寝るか,だ。

今年のLate Breakingの目玉はどれだろうか。大腸がんでベバシズマブとセツキシマブのhead-to-headの試験が1つあるようだ(正確には,オキサリプラチン + ベバシズマブ vs オキサリプラチン + セツキシマブ)。これなど,3つの製薬会社にとって重要だから,セッションの混雑ぶりはたぶんすごいだろうな。

ANAのホームページをみたら,明日が出発のピークなのか。シカゴ行きのフライトはすべて満席。わたしは,空きがあれば自動的にプレミアムエコノミーにアップグレードしてくれる上級会員だが,ちょっと無理そうだなあ。

2013年5月22日 (水)

学会取材:米国精神医学会(APA 2013)-②

もうあまり時間がないので、あと少しだけ書いて終わり。

DSMに関しては、批判しようと思えばいろいろおかしな部分もあるのだろうが、今回リリースされたDSM-5の英語版(あたりまえか?!(^^)!)がプレスルームに数部、置いてあったので、原稿を書くためにざっとめくってみたが、DSM-IVより構成はすっきりして、読みやすくなっているという印象は持った。分厚いが英語そのものは簡単だ。用語について新しく作られたものや、以前からあるが、今回、やたらと増えた(気がする。数えたわけではない)というか、シンポジウムなどでも強調されていたのが、specifier(s)だ。日本の出版物では、特定用語、と訳されているが、どうもピンとこない。英語でもイマイチピンとこないが、4日間、毎日聞いていると、なんとなく耳に慣れてきたのは確かだ。

今回、聞いた講演でも最もよかったと思うのは、21日にあったLecture 29、Stephen M. Stahlによる“What is a 21st Century Neurobiologically-Empowered Psychiatrist? Lessons From Crime Scene Investigators”だ。

内容豊富かつユーモアに富んだ、それでいてわかりやすい講演だったが、これについては、仕事で原稿を書いたので現時点であまり詳しくは書けない。

ただ、この講演を聞いて、わたしは、DSMというものがどういうものか、感覚的によく理解できた気がするし、dimentional diagnosisとか、symptoms domainなどという言葉の意味するところもかなりスッキリ理解できた。

学会取材:米国精神医学会(APA 2013)- ①

16日からサンフランシスコに来ている。会議は今日(22日)までだが、仕事は終わったのであと2時間でホテルを出て帰国する。今回は日本精神神経学会(福岡)が続いているので成田から福岡に直行予定。

APAは昨年も来たが(取材は通算3回目)、今年の目玉はやはりDSM-5のリリース。知らない人のために書いておくと、DSMとは、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの略語で、日本語では、「精神障害の診断と統計の手引き」と訳されている。DSMはAPAが作ったものだが、今や米国はもとより、世界中の精神医学の主要診断基準の1つになっている〔もう1つはWHOのICD(International Clasification of Diseases)で、こちらは精神疾患だけでなく、すべての疾患の分類〕。

DSMは1994年にIVが出て以来、19年ぶりの改訂。今回からはDSM-5とアラビア数字になっているが、これは、DSM-5.1とか-5.2のようにマイナーバージョンの改訂を出しやすくするためだとかを仄聞したが真相は不明)。

目玉、と書いたが、DSM-5のファイナルバージョンはすでに昨年12月に承認されており、その前にも、Webで公開されていたので、DSM-IVからどのように変わるかはほとんど知れ渡っていた(知っている人は知っている)(はず)。

また、過去1~2年、パブリックコメントも募集していたので、DSM-5がらみの議論や批判はすでに出尽くしていた。改訂部分の個々について賛成意見、反対意見がいろいろあるが、対立が激しい項目というのは、結局、サイエンスというよりも、思想信条(?)、あるいは、利害関係、のようなものが強く関係しているので、結局、多数派の意見が通ることになる。

DSM-IVに深くかかわったAllen J. Francesが、最後まで強い批判的意見をさまざまなところで発表していたらしいが、結局、“現役”でないからあまり影響力はなかったようだ。

Allen Francesが強く批判していた改訂内容の1つは、大うつ病性障害の

(例:DSM-IVでは、大うつ病性障害の診断基準のなかで、DSM-IVでは、死別反応(bereavement reaction)を除外(Bereavement Exclusion)しているのに、DSM-5ではその除外をはずした(Removing the bereavement exclusion)点だ。これは、くだけた言い方をすると、親しい人が亡くなって落ち込んでいても、その抑うつが診断基準に合致する期間(2週間)続いたら、うつ病と診断される、ということだ。

死別反応に関しては、HorwitzとWakefieldという学者(社会学者と遺伝学・疫学研究者)が2007年に“The Loss of Sadness”という著書で、正常な悲しみがDSMではうつ病とされてしまうという批判をして以来、話題になったようだ。

Bereavement Exclusionに対する批判は相当強かったようで、今回のAPAで、<DSM-5 and Major Depression>をテーマにしたシンポジウム51(超満員だった)では、4人のスピーカーのうちの1人、Sidney Zisookが“The Berevement Exclusion”のみをテーマとした講演(説明?説得?言い訳?)をしたほどだ。

いろんなスライドを示しながら、「死別反応もうつ病性の抑うつ反応も、結局、区別はつけられないし、2週間続けば、治療して患者が楽になるのであれば治療したほうがいい」と、これもあらっぽい要約だが、そんな感じの発表だった。

笑ってしまったのは、「そうわいっても、正常な死別反応とうつ病をすべて同じとあつかってよいなどとは一言も書いていない。セクションIIIをきちんと読めば、Clinical Judgementが大切だと書いてある」というようなことを言っていたことだ。

これなど、DSMに限らず、どの医学領域のガイドラインの序文などに必ず書いてあることだ。ただ、いわゆるほかの領域のガイドラインとDSMの違いは、DSMの方が保険医療に与えるインパクトがはるかに大きいだろうということだ。

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