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2016年6月15日 (水)

学会取材-米国糖尿病学会(ADA)2016 - 新製品発表会かと感じた<LEADER試験>のシンポ。なんだかなあ。。。

14日17:30ニューオリンズ発のUA便に乗り、今、ロサンゼルスのUAラウンジにいる。午前1:20発のANA便で、16日の午前5時に羽田着予定。3日かかりの帰国だ。ビジネスラウンジに入れるからいいとは言うものの、乗り継ぎ時間が7時間半とは、なんだかなあ。。。

Img_9036_2


今回のADAの仕事はイレギュラーな仕事で、終わってみればちょっと拍子抜けだったが、今年の目玉ともいえるLEADER(international  Liraglutide Effect and Action in Diabetes: Evaluation of Cardiovascular Outcome Results—A Long Term Evaluation)試験の発表シンポジウムについて感想を少しだけ書いておく。

自分の仕事もこのシンポジウムを聞くことだったのだが(ただし、私の仕事のスポンサー企業はリラグルチドのライバル会社)、まずは発表の場の雰囲気に違和感を感じた。LEADER試験がGLP-1受容体作動薬のなかで、はじめてMACE(major adverse cardiovascular event)をプラセボ群と比較して有意に抑制した、ということはすでにこの薬のメーカー(ノボノルディスク社)からプレスリリースとして出されていたので、今回はその正式発表ということになる。実際、シンポジウム終了直後にデータのembargoは解禁され、論文もNew England Journal of Medicineに発表された。

発表シンポジウムは最も広いF会場で行われ、1時間以上前から入場を待つ人が集まっているのに、開始の30分弱前まで入口を開けない。そこでまず、わたしはイヤな作為(操作)を感じた。ほかのシンポジウムなどではもっと早い時間でもドアは開けていたし、会場はバカでかいので早く開けて中に入れたほうが廊下の人だかり・混雑を緩和できるのに、まるでわざと混雑・人だかりを作って、写真の被写体を作っているようだった。

開場後も、これからまるでiPhoneかなにかの新製品発表会でも始まるのか、というような一種異様な雰囲気で、聴衆の少なからずが興奮ぎみだった。開始までに流される音楽も医学の学会の発表前の音楽としては場違いな感じがした。

そして発表が始まると(9つのプレゼンテーション。そのうち、Discussantとして最後に発表した人以外は、LEADER試験の試験委員)、演者がいいデータに触れるたびに、明らかに、「さくら」 と思しき人たちが一斉に拍手をし、それにつられて聴衆の多くも拍手する、といった具合で、完全にお祭り騒ぎ。

糖尿病治療においては、血糖コントロールで細小血管障害は防げるが、大血管障害の予防についてはエビデンスがないというのは、わたしがこの仕事を始めたころから言われていたことで、唯一、UKPDSが厳格コントロールで大血管障害も予防できるということを、長期のフォローアップで「証明」しているだけだった。

それが、昨年、SGLT2阻害薬のエンパグリフロジンで、MACE(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の3ポイント)を有意に抑制できることが報告され(EMPA-REG試験)、話題になった。

LEADERはそれに続くCVアウトカム(同じく3ポイントMACE)抑制のエビデンスで、GLP-1受容体作動薬としては初のエビデンスなので、話題になるのも力を入れるのもわからないではないが、あの発表の場の雰囲気は、なんだかなあ。。。

ま、素人が医学的な内容についてコメントするのはやめておくが、試験で発表されたこのスライドを見ると、

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1人を心血管死から救うには、104人を3年間治療する必要がある。これをリラグルチド(ビクトーザ®)の日本の薬価で計算すると(処方量を日本の1日最大の0.9mgとして。LEADER試験では平均1.7mgくらい使われていたらしい)、わたしの計算が間違っていなければ5500万円くらいになる。糖尿病による心血管死を1人救うのに5500万円かかる治療が、統計学的に有意な治療であっても、はたして臨床的に(あるいは、医療経済的に)意義あるものと言えるのかどうか。。。。。

なんだかなあ。。。

今回のADAでは、ほかにも、なんだかなあ。。。と感じること(学会運営の仕方に関して)があったが、もうそろそろゲートに向かったほうがよさそうなのでこのあたりでキーボードを置くことにする。

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